「Qべぇプロジェクト」と「Qべぇ」

Qべぇプロジェクトのキャラクターの老犬「Qべぇ」は犬としては高齢の15歳で元の飼い主によって保健所に持ち込まれました。
理由は「吠えるようになってうるさいから」でした。
飼い主が払う手数料2000円で殺処分対象になりました。
2013年10月のことです。

当時、所属していた保護団体「石川ドッグレスキュー」に処分場から連絡が入りました。処分場担当のメルママこと澄子は所定の日に面会に行き、職員さんから詳しい事情を聞き愕然としたそうです。私も伝え聞きそんな理由で長い間一緒に暮らした犬を捨てるなんて信じられない気持ちでした。

面会の時にはすでに毛がボサボサで、お尻の毛も汚れで固まってしまい尻尾が二本あるように見えていました。長い間、世話をされていないことがわかりました。爪も長く伸びていたので繋がれたまま放って置かれてたんでしょう。そんな飼い方をしてた人なら高齢の犬を捨てることもありうる行為なのかもしれません。そんな状況だから長生きしないのかもしれないが、殺処分されるより暖かい布団がある家で最後の時を過ごさせてあげようと、我が家で引き取ることを決めたのでした。

15歳とはっきり年齢が分かったのは飼い主持ち込みだからです。持ち込まれる時には書類に理由などと共にその犬の情報も書き込むようになっています。
その書類には名前も記載されていてその名前を呼んでも全く反応しません。痴呆もあるのかと思っていましたが、それは後でお話ししますが違っていたようです。反応しない名前を呼び続けるより新しい名前をと、我が家のしきたりでアルファベット順の名前「Qべぇ」と名付けました。

我が家には先住犬が4頭いましたが全て雌です。雄のQべぇにとってはハーレムそのものです。我が家に来るまでは元気がなかったのですが「オトコ」が目覚めたのでしょうか?日を追うごとにみるみる元気になりました。嫌われながらも先住犬のお尻を追いかけ回していました。

 

マウンティング♡するQべぇ

 

新しい名前もすぐに覚えて呼べば来るようになり、トイレもすぐに覚えました。他の子の真似をしてどんどん我が家のルールを覚えていきました。先住犬で一番若いパティは餌を食べ終わったら自分の皿を流しまで持ってきます。それを真似て自分のお皿を咥えて持って来るようになりました。

 

皿をくわえるQべぇ

 

そうなんです。痴呆は思ったより進んでいませんでした。ただ何も話しかけられず名前すら呼んでもらえてなかったのでしょう。本当は頭が良くてなんでもすぐに覚えることのできる才能があったのです。そして元気がなかったのもちゃんと育てられていなかったからです。栄養のある食事を与えたら健康になりました。吠えるようになったのは餌の要求です。高齢になると餌への欲求が増して頻繁に要求するようになります。痴呆の初期症状なのでしょうか?餌の量はそのままで小分けにして回数を増やしたことで無駄に吠えることはなくなりました。Qべぇは様々なエピソードを残して、そこから3年半も僕たちと一緒に生活してくれました。引取り時の健康診断では、胸に腫瘍があるようだと診断されていたのですが、悪化することもなく、最後は老衰で静かに息を引き取りました。このようなことから解るように、ちゃんとした当たり前の世話をしてあげれば健康で長生きできるのです。さほど手を煩わせることもありませんでした。たとえ手がかかったとしても家族として愛情があれば多少のことは乗り越えられるのではないのでしょうか。

Qべぇを我が家に迎えて年が変わった一月下旬、再び老犬が収容されたと処分場より連絡がありました。今度も飼い主持ち込みですが、Qべぇの時とは少し事情が違っていました。
飼い主自身が高齢になり介護施設に入るとのことでした。行き場を失くし保健所に持ち込まれたのでした。この子も我が家に迎えることになりリズと名付けました。この子も15歳でした。

保護犬の里親を探す活動で以前から問題に思っていたのは老犬についてでした。若い子はすぐに里親が見つかりますが老犬は里親になってくれる人がなかなかいません。今の石川県と金沢市では「殺処分ゼロ」に近づけようと努力していますが、以前は結局、処分場で殺処分になる老犬が多数いました。老犬が捨てられる背景には様々な理由があることも活動の中で知りました。その中にはやむを得ない事情もありました。そのような状況に手をこまねいていました。しかし立て続けに老犬を迎えて老犬の保護に力を入れるべきだと思うようになりました。それがこのプロジェクトのきっかけです。きっかけとなったQべぇの名を冠して
「Qべぇプロジェクト」としました。
Qべぇプロジェクトの目標は里親の見つかりづらい老犬のための専用保護施設を作ることです。老犬保護施設は資金面でも運営面でもハードルが高く、個人の力ではすぐにできることではありません。
「犬も家族、最後まで一緒に!」 犬を家族として迎え、最後まで一緒にいて欲しいというこのメッセージを広めながら、たくさんの方々の協力を募っています。

2017.11.8 代表;能登谷季典